変わっていくまちの中で、
変わらない味
すたんど割烹いし山
石山 良和(よしかず)さん
夜風にのっておいしそうな香りが漂う七日町で、32年のあいだ変わらぬ味を届けてきたのが、和食の名店「すたんど割烹いし山」の店主・石山 良和さんです。山形市の農家に生まれ、米沢の「東家」での修業を経て、自身でお店を構えてから今に至るまでの50年以上、和の食材と向き合ってきました。
「山形は季節ごとにおいしいものがたくさんあるけれど、冬は雪に閉ざされる。コンビニやスーパーのない頃は、食べ物を蓄えるために、なんでも家庭で保存していたのです。雪が降ってから春が来るまで、真っ白な世界で生きるために、あらかじめ旬の食材を使って干物や塩蔵物を一生懸命つくっておく。わらびやあけび、すべりひゆ。それは、冬に四季のものがすべて食べられるということでもあります。」
語る言葉の端々から、山形の食文化への敬意がにじみます。
「これからの時代に、ちゃんとした和食や、山形ならではの食文化を残していきたいです。以前、単身赴任中にいらしたお客さんが、“山形県は、山形の中で採れたものだけを食べて生活できる”と言ったのが印象的でした。それは、お母さんやおばあちゃんたちが工夫を重ねてきた結果、生まれた郷土料理のおかげです。干物や漬物など、山形ならではの知恵をつないでいきたいですね。」
そんな思いを胸に営んできたのが、すたんど割烹いし山です。
「いまでは珍しくなった“すたんど割烹”というのは、戦後に流行った言葉。敷居が高い印象のある割烹屋さんを身近に感じてもらえるように、予約なしで入ることができて、それでいて一通りの和食を食べられる。一見さんでも気軽に和食を楽しめるようなお店です。」
「お店のある七日町は、ゆったりと食事を楽しむお客さんが多く、居心地のよいまちです。かつては大沼をはじめとする百貨店が立ち並び、昼も夜もにぎわっていました。いまはお店の数も減りましたが、昔から変わらない穏やかな雰囲気が、このまちのいちばんの良さです。」
七日町とともに歩んできた年月を経て、御殿堰の整備にあたり、建物を新たに再開する予定です。
「これまでは夜のみの営業でしたが、新たにお昼の営業を始めます。お昼のメニューは米沢牛や山形牛などの山形のお肉と海鮮をメインに、納豆汁、きのこ汁、山菜汁など、土地の恵みを活かしたお汁と季節の小鉢を添えて。四季を感じられるようなお料理をご用意してお待ちしています。」
変わっていくまちの中で、変わらない味が安心をくれる。すたんど割烹いし山は、これからも七日町の“おいしい時間”をつくっていく。
日常の小さなよろこびや、
このまちで過ごす時間の
味わいをききました。
Q 日常的にやっている、ちょっとした好きなことは?
板前になってから50年、毎朝市場へ行き魚を仕入れています。
Q 好きな山形弁は?
「ありがど様〜」
Q 季節を感じる瞬間は?
納豆汁に入れる芋がらなど、保存食の文化に冬を感じます。
(※芋がらとは、里芋などの茎から葉と皮を取り除いて乾燥させたもの。)
Q 「ここは変わらないなあ」と思う場所や風景は?
なかなかないですが、文翔館や大沼は、建物が変わらず残っていますね。
Q 誰かにそっと勧めたくなるような、自慢の場所やお店は?
好みや用途に合わせて、お店でお伝えしますね。
Q 七日町や山形市のたのしみ方は?
「専称寺」「龍門寺」「出羽国分寺薬師堂」などのお寺散策。
Q 思い描く、十年後の七日町は?
あまり都会化せず、七日町ならではのよさが続いて欲しいです。
すたんど割烹いし山
店主 石山 良和(よしかず)さん ―左
息子 貴士(あつし)さん ―右